社会学評論
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特集「アジアがひらく日本」
韓国の社会保障にみるアジアの共通課題
――21 世紀の新しい道を探る――
金 成垣
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2019 年 70 巻 3 号 p. 222-240

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抄録
20世紀末に韓国では,日本や西欧諸国に比べて半世紀以上遅れて社会保障制度が成立した.その後,おおよそ20年が経過している.その間,韓国の社会保障制度はいかに展開してきているのか.成立後さまざまな制度改革や新しい制度導入が行われており,その特徴を一言でいうことは難しい.しかしながら少なくとも,日本や西欧など先進諸国の歴史的経験に照らしてみると,成立後の韓国における社会保障制度は,それらの国とは大きく異なる方向性をもって展開していることが見受けられる.本稿では,先進諸国の歴史的経験,とくに戦後の「福祉国家の黄金時代」にみられた社会保障制度の大幅な拡大が,フォーディズムという20世紀特有の歴史的条件のもとで可能であったと捉え,21世紀の韓国は,その歴史的条件を享受することができず,それゆえ,先進諸国とは異なる政策的文脈のなかで新しい挑戦を試みている,あるいは試みざるをえないことを明らかにしたい.ここで重要なのは,先進諸国と異なる韓国の政策的文脈とそこにおける新しい挑戦が,韓国だけに限らず,他のアジア諸国・地域にも共通してみられていることである.そこで本稿では,韓国における社会保障制度の展開を分析し,それを通じて,韓国に限らず21世紀におけるアジア諸国・地域の新しい道を探ることを最終目的とする.
本稿は以下の構成からなる.まず第1節では,韓国における社会保障制度が,先進諸国の歴史的経験と異なる方向性をもって展開されていることを概観する.次に第2節では,フォーディズムと福祉国家についての歴史的かつ理論的考察を行いつつ,先進諸国の歴史的経験と異なる韓国の政策的文脈を明らかにする.最後に第3節では,先進諸国とは異なる政策的文脈のなかでみられる韓国の新しい試みを紹介し,それが示す21世紀アジア共通の課題を検討する.
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© 2019 日本社会学会
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