社会学評論
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消費社会の主体としての都市新中間層に対する認識の変容
――小資言説の分析を中心に――
呉 江城
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2020 年 71 巻 1 号 p. 138-155

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抄録

1990 年代後半,中国社会に「小資」と呼ばれる社会層が登場した.当初「小資」は中国社会に出現した新しい消費社会の主体である「都市新中間層」として脚光を浴びたが,消費社会化の進展とともにマスメディアの言説空間でその定型イメージが崩れ,脱中間層化を果たす.本稿は「小資」概念に関連する言説を分析することで,中国社会の都市新中間層に対する認識の変容において,どのような力学作用が働いたかを究明することを研究目的とする.

使用する方法は,3 大新聞紙における小資言説を対象とした批判的言説分析である.以下に示すのが主な結論である.まず,「小資」概念の脱中間層化の要因はメディア空間における「小資的主体」の弱体化であった.また,その「小資的主体」の弱体化は,消費社会化の展開によって隆盛した大衆的消費イデオロギーが,都市新中間層のディスタンクシオン戦略を崩壊させた結果であった.本稿における分析の結果,都市新中間層に対する認識の変容と中国の消費社会化の特質との連動関係を,後発近代化国家の近代化方式の特性として位置付けられることが明らかになった.

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