社会学評論
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特集「インターネット時代の社会調査法――ウェブ調査をはじめとするデータ収集法の革新と課題」
ウェブ調査の結果はなぜ偏るのか
――2つの実験的ウェブ調査から――
吉村 治正
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2020 年 71 巻 1 号 p. 65-83

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抄録

本稿では,ウェブ調査の示す結果の偏りが,インターネットが使えない人が排除される過少網羅のもたらすバイアス・低い回答率のもたらすバイアス・調査対象者の自己選択によるバイアスのいずれに帰されるかを,2 つの実験的ウェブ調査を通じて検証した.第1 の実験は,同じ標本抽出台帳(選挙人名簿)から抽出された対象者を郵送回答とウェブ回答に無作為に振り分け,回答者の構成ならびに回答内容を比較したもので,網羅誤差と非回答誤差の影響を測定することを目的とした.第2 の実験は,異なる標本抽出台帳(1 つは住民基本台帳,もう1 つは調査業者のもつ登録モニター)から抽出した対象者にまったく同じ内容のウェブ調査を行い,ウェブ調査のモニター登録という自己選択のもたらす影響を測定することを目的とした.その結果,過少網羅および低回答率は1 次集計結果の偏りにはほとんど影響を与えないこと,対照的にモニター登録という自己選択のもたらす影響は無視しえない深刻なものであることが明らかとなった.

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© 2020 日本社会学会
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