社会学評論
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戦後教育達成の性差の長期変動
――学校段階・階層によるトレンドの違いに着目して――
濱本 真一
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2020 年 71 巻 3 号 p. 377-393

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抄録

本稿の目的は日本の教育達成の性別格差の長期趨勢を検討することである.戦後日本の教育拡大は,男性に対しては大学進学の増加,女性に対しては短大進学の増加といったように男女で別々の形で生じた.1980 年代生まれ世代以降,女子の大学進学率が短大進学率を上回るようになり,これまでの研究では性別による教育達成の格差は消滅することが予測されていた.本稿では教育達成の性差にあらためて着目する.戦後世代の教育達成の性差がどのように変化してきたのかを定量的に検討し,性別による教育機関の制度的な棲み分けがなくなった今日においても,教育達成の性差がみられるのかを明らかにする.

分析からは,教育達成の性差は学校段階によって異なるものの,すべての進学段階において性差が減少していることが示された.中等後教育段階以前の性差は若年世代ではほぼ消失していたが,大学進学段階は出身階層や学力を統制した後もなお男性優位の状態であり,隠れたジェンダー・トラックや教育に対するライフコース上の価値の違いが示唆される.さらに,出身階層によって性差の大きさが異なり,有利な階層の家庭において男性優位の構造が大きいということも示された.性差の減少スピードも階層間で異ならず,性差そのものが減少する一方で階層効果は安定的であった.性別が教育達成格差に与える影響は階層と比べて小さくなり,男女の進学構造が類似したものになることが予測される.

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