社会学評論
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特集「グローバル化と農村・過疎化」
近代山村にみる広狭域のネットワーク構造
――森林資源をめぐる動員網と関係網――
福田 恵
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2021 年 71 巻 4 号 p. 595-614

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抄録

本稿では,「過疎の時代」のただなかにある山村像を再考するために,「林業の時代」を支えた近代山村について考察を加えた.その結果,夥しい林業者の移動を通して,山村社会の間に幅広いネットワークが形成されていた点を確認し,次のような社会的特質を抽出した.

まず大局的にみれば,交通インフラや行政組織の整備などを通して,このネットワークには関連諸機関や有力者の網の目が絡みつき,山村社会を政治的・経済的に動員するメカニズムが埋め込まれていた.つぎに各地方の特質からみれば,伝統的な林業地帯と新たな森林フロンティアが,出稼ぎの輩出と受入の関係を形づくることで,森林資源の探索と開拓が繰り返され,山村の網の目は全国各地に派生していった.最後に地域の具体的場面からみると,ネットワークの深部には,国家や資本から自律した広狭域におよぶ社会関係の諸契機が内蔵されていた.その関係網は,狭域的にいえば,一村落における複数の「山村」の集合と,「峠」を利用した人的交渉によって支えられ,また広域的にいえば,親族網やメンバーの入れ替わり,高い社会的モビリティをその派生・拡大の起動力としていた.

本研究は,既存の山村像に対して,山村間における広狭域に及ぶ空間移動とそこに織り込まれた社会的流動性を強調し,閉鎖的で硬直化したイメージをもつ現代山村のなかにも開放的かつ柔軟な関係性が潜在的に組み込まれていることを示唆した.

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© 2021 日本社会学会
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