社会学評論
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特集「グローバル化と農村・過疎化」
グローバル経済下の中山間地域村落の変容と存続実践
――福井県越前市における集落営農調査から――
伊藤 勇
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2021 年 71 巻 4 号 p. 615-634

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抄録

グローバル経済の展開とそれに呼応した新自由主義農政の展開とによって苦境の度を深める中山間地域において,地域農業と村落社会の維持・存続をはかろうとする集団的実践として「集落営農」を取り上げ,それが取り組まれた背景と経緯,取り組みの成果と課題,そして,「集落営農」を媒介に加速したと思われる農家と村落の根本的変容について,福井県越前市における事例研究の 調査知見を報告する.

「兼業稲作」を特徴とする当地で「集落営農」の進展を促したのは,米価下落と減反拡大による稲作農業の採算悪化に伴い兼業農家の間に生じた動揺と危機感である.そして,「村」としてのまとまりや共同の歴史をもち,一定の意欲と能力を備えた「定年帰農者」等の主体を確保しえた村落において,「集落営農」が積極的に取り組まれた.約10 年の取り組みによって種々の成果が挙がり,地域の農業と農地そして村落社会が維持されてきた.しかし今,農外就業現役世代の意識と行動の両面での「農離れ」や「村離れ」が顕著になって次世代の後継者問題が深刻化している.その裏には,農業情勢と農政の変化というマクロな変動を背景に取り組まれた存続実践に媒介されて,長年安定を保ってきた兼業稲作の「家」が大幅に減少し,そうした家々が構成してきた「村」の性格も大きく変容したという事態がある.中山間地域の農業と村落の未来は,こうした根本的変容の先に展望されなければならない.

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