社会学評論
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世代間所得移動と階層帰属意識の趨勢分析
コン アラン
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2021 年 72 巻 1 号 p. 2-18

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抄録

本研究は,世代間所得移動が階層帰属意識に対してもつ影響を1955年から2015年までのSSM調査(社会階層と社会移動全国調査)データを用いて,時系列的に検証したものである.世代間所得移動の測定には,父親の所得を推定する方法を用いた.検証にあたり,本研究では,①現在の階層的地位のみが階層帰属意識を決定するという「絶対地位仮説」,②上昇(下降)移動は相対的満足感(剝奪感)を与え,階層帰属意識を高める(低める)という「相対地位仮説」,③上昇(下降)移動しても,過去の低い(高い)階層的地位の影響が残るため,階層帰属意識を低める(高める)という「慣性仮説」の3つの仮説を提示し,データを用いて検討した.分析の結果,1975年においては世代間所得移動は階層帰属意識に対して正の影響力をもつが,1985年になるとその影響力を失い,2015年,再び統計的に有意な負の影響力をもつことがわかった.この結果,1975年においては「相対地位仮説」,1985年から2005年においては「絶対地位仮説」,2015年においては「慣性仮説」と合致する結果となった.本研究により,世代間所得移動は階層帰属意識に影響しており,その影響力と方向は時代により変化していることが明らかとなった.

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