社会学評論
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失業率が日本人の排外意識に与える影響の(再)検証
―社会調査データの二次分析を通じて―
下窪 拓也
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2021 年 72 巻 3 号 p. 312-326

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抄録

集団脅威仮説では,排外意識の根底には外国人住民をホスト住民への脅威とする認識が存在すると説明する.この仮説に従えば,失業率の上昇によって,人々に外国人住民とホスト住民の雇用をめぐる競争関係の悪化を認識させるため,排外意識が高まると予想される.国内の先行研究では,失業率と排外意識の関連に関する上記の仮説は否定されてきた.しかし,従来の研究はクロスセクションデータの分析にとどまり,排外意識に影響を及ぼす失業率以外の地域独自の要因を統制できていない点が指摘される.

本研究は,複数の時点で繰り返し収集された社会調査データを用いて,観測期間中に変化しない地点独自の効果を統制し,失業率と排外意識の関連を再検討することを目的とする.本研究ではさらに,脅威を個人が認識する主観的なものと捉え,失業率の上昇は,主観的な脅威の認識を媒介にして,排外意識に影響を与えることを想定したモデルの分析を行った.

地点独自の排外意識に与える影響を統制した分析の結果,失業率の高まりは外国人を雇用機会への脅威とする認識を強めていることが確認された.しかし,この外国人を雇用機会への脅威とする認識は,地域レベルの排外意識に統計的に有意な影響を与えないことが示された.一方で,外国人を治安への脅威とする認識の地域的な高まりが,排外意識を高めた重要な要因であることが明かとなった.

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© 2021 日本社会学会
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