社会学評論
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公募特集「ジェンダー研究の挑戦」
生殖における男性の当事者性・再考
―出生前検査に対峙した男性たちの役割カテゴリーの実践に着目して―
齋藤 圭介
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キーワード: 生殖, 自己決定, 出生前検査
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2022 年 72 巻 4 号 p. 467-486

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抄録

これまでのジェンダー研究は,生殖の当事者は女性のみだと考えており,男性を生殖の当事者とはみなしてこなかった.しかし,生殖にかんする新しい医療技術の普及により,男性もまた生殖の当事者であることが再認識されつつある.ジェンダー研究がこれまで依拠してきた議論フレーム(自己身体自己決定)では適切に論じることができない状況が生じており,男性の生殖経験の解明はジェンダー研究が取り組むべき現代的課題といえる.

そこで本稿は新しい医療技術の例として出生前検査を取りあげ,この検査を受検/検討した男性たち10名へのインタビュー調査の分析をもとに,男性が生殖の〈当事者であること〉を示すために用いた言語資源と依拠した役割カテゴリーを明らかにした.男性たちは,「自分たち」「自分の子」「2人の子」といった言語資源を用いて,複数の役割カテゴリーのうちとくに親役割の実践をとおして当事者化することで生殖にかかわっていることがわかった.

分析の結果,男性の生殖経験の特徴として2つの知見を導出できた.1つは,生殖における男性の主体化のプロセスは,将来の親役割を予期して当事者化するという間接的なプロセスをふむことである.もう1つは,男性が親役割の実践をとおして生殖における当事者としてふるまうさい,個々の男性の意図とは独立して,議論の構造的に家父長制的なニュアンスが含まれてしまうことである.

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© 2022 日本社会学会
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