社会学評論
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子育て支援の拡充と増税が子どもをもつ有配偶女性の出生意欲に与える効果の要因配置調査
松田 茂樹
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2022 年 73 巻 3 号 p. 196-213

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抄録

本稿の目的は,要因配置調査を用いて,子育て支援策の拡充およびその財源確保のための増税が,子どもをもつ有配偶女性の追加出生意欲に与える効果を明らかにすることである.この方法を用いた先行研究は,財源確保を考慮せずに,子育て支援の拡充が人々の出生意欲に与える効果を研究してきた.これに対して,本研究の独自性は,少子化対策の現状をふまえて,子育て支援策を拡充するために増税もしなければならない場合を想定した要因配置調査を実施したことである.使用した要因は,児童手当の増額等の5つの子育て支援策と1つの増税策である.これらの要因を組み合わせたヴィネットカードを作成して,そこに記述された支援策が実施された場合の追加出生意欲を調べた.子どもをもつ有配偶女性に対する調査の個票データを分析した結果,次の3点の知見がえられた.第一に,子育て支援策のうち,子育ての経済的負担を軽減するものが,追加出生意欲を向上させる効果が相対的に大きい.第二に,子育て支援策の財源確保のために増税が行われると,追加出生意欲は大きく減退する.第三に,子育て支援策を拡充する一方でその財源確保のために増税が行われると,一部の子育て支援策が本来もつ追加出生意欲を改善する効果を緩和する.本研究の結果は,今後の少子化対策のあり方に示唆を与えるとともに,この研究方法を社会福祉等の政策にも応用できる可能性を拓くものである.

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© 2022 日本社会学会
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