2023 年 74 巻 1 号 p. 122-139
日本で働く高度外国人材に関する研究は,政策的・理念的な議論が先行し,彼ら/彼女らがどのような存在であるのかという点について,とりわけ企業の視点からはほとんど実証的な考察がなされていない.そこで本稿は,企業別シティズンシップの概念を参照しながら,外国人総合職の雇用を積極的に行う日本の大企業9社へのインタビュー調査を通して,日本企業が総合職を与えるのに相応しい外国人をどのように考えているかを質的に検討した.その結果,外国人総合職には現在の組織システムに適応できる人材であると同時に,多様性を生かして組織内部の変革を促しうる人材であることが求められていた.これは日本人総合職同様の能力に上乗せして,多様性を生かした革新という外国人としての異質性を要求する,企業の複層的な期待を示している.
以上の分析結果は,外国人が総合職社員として企業のシティズンシップを獲得することがいかに困難であるのかを示唆するとともに,日本企業において不平等と排除を生み出す企業別シティズンシップの論理を鮮明に映し出している.本稿の分析は,高度外国人材を企業社会と市民社会において二重にシティズンシップが付与される対象として認識可能であり,その視点が独立に蓄積される移民研究と組織研究を架橋しうることを示唆する.今後は日本企業の特性や労働市場における布置,社会規範などの要素を考察対象として,調査を発展・継続させることが望ましい.