2023 年 74 巻 2 号 p. 229-245
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の蔓延は,子ども,および子どもをケアする女性にさまざまな影響を与えたと同時に,子ども・子育てを支援する取り組みのあり方にも変化を迫るものであった.本稿では,首都圏自治体A における公立児童館,居場所づくりNPO法人,社会福祉協議会へのインタビュー調査で得られたデータにもとづき,異なる立場の支援者たちがどのように課題を認識し,対応したのかについて,複合的に検討する.
分析からは,COVID-19 蔓延がもたらしたネガティブな影響がある種の普遍性をもつものであった一方,運営方法の変化によりそれまで来られなかった利用者が来るようになるなど,ポジティブな側面もあったことが明らかになる.加えて,ケアをめぐる規範との関連で重要な知見が3つある.第1に,活動において消毒作業が大きなウエイトを占めることに対してある対象者がジレンマを吐露したが,これは「弱いケア」と「強いケア」の齟齬がもたらす葛藤と解釈できる.第2に,対象者たちが果たす「つなぎ役」の実践が,専門職によるアセスメントへの警戒感をもつ親に対しては重要であった.そうした親が専門職によるアセスメントを忌避する背景に,家族主義が強い日本社会における親役割規範があると考えられる.関連して第3に,こうした「つなぎ役」の実践は,専門職によるアセスメントが孕む問題をも解決しうるものと考えられる.