2023 年 74 巻 2 号 p. 316-331
都市で暮らす人々の生活は,「不利の集積」などの居住地の社会環境にさまざまな影響を受けている.本稿が着目するのは,「住民が自らの居住地に対して抱く感情的な絆の強さ」である地域への愛着である.地域への愛着が個人的な要因だけでなく居住地的な要因にも影響を受けるとすれば,それはどのような要因だろうか.本稿では社会解体論に基づいた分析枠組みにより,地域への愛着の規定要因を定量的に明らかにする.本稿が用いるデータは,名古屋市における50の学区の調査から得られたものであり,分析にあたっては居住地レベルの変数を含めたマルチレベル分析を用いた.分析の結果として,不利の集積度が高い地域に居住する人々は地域への愛着が低い傾向にあるということが明らかになった.地域の荒廃度が地域への愛着に影響していることは確認できなかった.その一方で,集合的効力感の平均値が高い地域に居住する人々は,移動人口比率などの変数を統制した場合には,地域への愛着が高い傾向にあることが明らかになった.本研究の結果は,Wilson-Sampson の社会解体論に基づく分析モデルとある程度整合するものである.しかしながら,不利の集積度が高い地域で移動人口比率が低いなど,分析モデルと分析結果には整合しない部分もある.本稿では名古屋市の社会空間構造を踏まえた分析結果の解釈を行う.