2025 年 76 巻 2 号 p. 176-192
本稿は,明治時代に刊行された女性誌の言説を調査し,明治20年代における「夫婦同姓文化」の受容について,次の3点を明らかにする.第1に,明治民法が正式に施行される前の明治20年代に,「夫婦同姓文化」が欧化主義を唱える雑誌や公文書ですでに登場していた.第2に,男女平等の観点から「夫婦別姓」を擁護する立場と,西洋の近代家族規範と「家」規範の融合により「夫婦同姓」を正当化する立場を中心に夫婦の姓をめぐって論争が起こった.第3に,明治時代の女性誌は,家族規範の西洋化および脱中国化を唱えたが,夫婦別姓が中国から伝来したものとは主張しなかった.雑誌の言説から一歩進み,夫婦別姓を中国の慣習と定義したのは,明治期の政治エリートであった.最終的に,脱中国化と西洋化という時代潮流の中で,夫婦別姓システムは除外された.