2025 年 76 巻 2 号 p. 193-211
視覚に障害をもつ人がプレーするブラインドサッカーをベースにした体験型プログラムが近年,学校や企業などで注目されている.日本ブラインドサッカー協会が事業として実施している複数のプログラムでは,参加した健常者のコミュニケーション力が大きく高められる可能性が示唆されている.
ブラインドサッカーはピッチを自由自在に動くことができる点において,ほかの視覚障害者向け競技とは異なる.この競技の根幹を支えていると推察されるのが,敵ゴール裏で距離や角度などを伝えるガイド,監督ら晴眼者からの声による情報をもとにした,視覚障害者と晴眼者のコミュニケーションである.
体験型プログラムのベースであるブラインドサッカーは,参加者の反応から,コミュニケーションをはぐくむ力を備えているのではないかと推察される.このため,本研究では,ブラインドサッカーにおける視覚障害者と晴眼者のコミュニケーションの特徴を探ることを目的とした.
インタビュー調査に基づく考察から,ブラインドサッカーのプレーヤーは,ガイドら晴眼者との声によるコミュニケーションを競技の根幹と捉えており,このコミュニケーションを軸に,ピッチで自由を感じるプレーを展開していること,また,その関係は健常者が障害者を助ける,といった一方的なものではなく,勝利という共通目的で混ざり合う,支援的関係を超えた対等なコミュニケーションであることなどが明らかになった.