栄養精神医学
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総説
オキシトシンと栄養:栄養精神医学における⽣物学的機序と臨床的意義
奥平 智之
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2026 年 2 巻 1 号 p. 182-197

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抄録

[背景]オキシトシン(oxytocin:OXT)は視床下部で産⽣される神経ペプチドで、分娩・授乳に加え、社会的認知・愛着・信頼・ストレス応答・報酬・摂⾷・エネルギー代謝を横断的に調整する多機能的な調節因⼦として理解されている。栄養精神医学では、⾷事・微量栄養素・腸内細菌叢によるOXT 系の修飾が注⽬される。

[⽬的]本稿は、OXT と栄養の接点を、受容体薬理・⽣合成・腸脳相関・摂⾷と代謝・精神疾患の観点から、確⽴・⽰唆・仮説の段階を明確に区別して整理し、医療者が実践できる具体的な臨床的⼯夫を⽰すことを⽬的とする。

[内容]OXT 受容体はG タンパク質共役受容体としてGq/11‒ホスホリパーゼC 系を介して作⽤し、そのリガンド親和性はマグネシウムや亜鉛などの⼆価陽イオンに依存する。成熟OXT のC末端アミド化には銅とビタミンC が必須である。腸管上⽪はセクレチン依存的にOXT を分泌し、特定の乳酸菌が中枢のOXT 放出を促しうる。外因性OXT は報酬性の摂⾷や固形物の摂取をある程度抑制するが、総エネルギー摂取への効果は⼀貫せず、肥満度・投与法・⾷事組成によって修飾される。⾃閉スペクトラム症や統合失調症に対する経⿐OXT 単独投与は、中核症状への⼀貫した有効性を⽰していない。これらを踏まえ、精神科外来・訪問看護・⼼理カウンセリングなどの各場⾯で多職種が実践できる具体的な臨床的⼯夫を、安全性とエビデンスの確実性に配慮して整理した。

[結論]確実に⾔えるのは、OXT が摂⾷・代謝・社会⾏動・ストレス応答に関与し、その受容体機能が微量栄養素環境に依存しうること、そして腸内細菌叢と双⽅向に相互作⽤しうることである。⼀⽅、特定栄養素の補充がヒトの中枢OXT 系を介して精神症状を改善するという因果は未確⽴である。栄養⽋乏の補正と⾷事の質の改善は標準治療を補完しうるが、OXT を単⼀の治療標的とみなす過度な単純化は避けるべきであり、むしろOXT が機能する⽣物学的・社会的基盤を多職種で整えることにこそ臨床的意義がある。

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