開発途上国の多くにおいて、特に緊急な社会問題として解決を迫まられているものは、急激な都市化によって生じた住宅問題、水問題、失業問題、交通問題、教育問題、治安問題、社会福祉問題、医療問題、公害問題等である。これらの課題を、住民の自助を伸長し、地域の連帯感を育てながら解決しようとするのが、都市におけるコミュニティ・デベロプメントの計画である。この論文は、歓塘地域の調査をふまえて、香港のコミュニティ・デベロプメントが、どのようなスキームで行われ、どのような問題をかかえているかを究明したものである。
香港のコミュニティ・デベロプメントに主として関連する政府機関はUrban Council, City District Office Social Welfare Departmentである。このうち、住民を組織化し、コミュニティの向上をはかろうとするものが、CDOの組織する互助委員会である。しかし、この互助委員会は、真の住民を代表する組織とはなっていない。Urban Councilの民選議員にしろ、互助委員会の制度にしろ、住民参加という名目を保つだけのものと終り、このため、コミュニティ・デベロプメントも効果をあげていない。その根本的原因は、植民地支配機構の性格から由来すると思われる。これを改革しようという動きが大きくないのは、新界の租借期限が一九九八年であるということと無関係ではないようである。