抄録
本論文の理解に資するため、要約の欄をかりて本論文を含む「市場の挫折と社会の危機」三部作の構想について述べておきたい。
第一部 市場制社会の基礎構造 第二部 市場の挫折と社会の危機 第三部 市場の理論から社会の理論へ
本論文は三部作の第一部に当たるものである。そこでは、市場制によって統括される経済総過程が理想型的に純化して提示され、合わせて現代社会の基礎的な構造が論究されている。第二部では、市場制の社会の各部面への無制限な浸透と社会問題の噴出との関連を閘明し、結果する市場の挫折と社会の危機を論じ、社会再生の道を探る。第三部では、市場の理論 (価格理論) の限界及びその社会学的領域への無反省な拡張の危険性を論じ、社会学成立の現実的基盤を社会の固有性領域に求める予定である。
本論文はこのように、形式的には独立の論文として書かれているが、実質的には第二部のための前梯的論考という一面も備えている。