社会学評論
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マルクス主義人格理論における基礎視角
-L・セーヴとG・マールクシュの所説によせて-
安田 尚
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1979 年 30 巻 1 号 p. 2-18,113

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抄録
マルクス主義は、従来ともすれば、人格や人間の問題を位相を異にする方法的視点を錯綜させたまま捉えようとして来た。昨今のこの分野における議論を見るにつけ、その整理は急務な課題と思われる。筆者は、ひとまずそれを、 (1) 哲学的レベル (認識論的-存在論的) 、 (2) 経済学的レベル (生産関係的-生産力的) 、 (3) 社会関係的レベル (社会性-個体性) 、 (4) 歴史関係的レベル (歴史性-普遍性) 、という四つの対立軸に整理し得ると考える。
こうした方法的視点の整理に基づいて、L・セーヴとG・マールクシュの人格理論を見るとき、両者がマルクス主義における「個」の形成の問題を社会関係的、あるいは歴史関係的レベルにおいて解明しようとした点に注目させられる。
新たな人格理論の構築にとって、存在論的視点を基盤として、生産関係と生産力の、社会性と個体性の、又歴史性と普遍性の統一的把握が不可欠な課題であると思われる。
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