社会学評論
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水田単作地帯における農家の家族周期と就労構造
宮城県遠田郡涌谷町生栄巻部落の事例
松村 和則
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1979 年 30 巻 3 号 p. 61-84

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抄録
本稿の目的は、農家が兼業を選択する主体的な条件と、そのもとでの兼業深化の度合ならびに稲作作業体系のあり方をモノグラフィックに明らかにしようとするものである。その際、直系家族周期からの接近を試みている。それは、激動下にある兼業農家の今日的変動をみすえ、その内在的要因を重視してアプローチすることに他ならない。それはこのような視角は従来からこの問題を考える上で、全く等閑視されてきたように思われるからである。
以下では、東北水田単作地帯の一村落をとりあげ、「兼業の深化→直系制からの逸脱 (→脱農化) 」と措定されたこれまでの論議に対して、農村直系家族の再生産過程とその中での新たな動きを実証的に跡づけるとともに、その直系家族のもつ論理が農外就労を含めた農家の就労構造に及ぼす影響の実態を明らかにする。
結論的にいえば、個別経営を基本とした今日の農家は、厳しい状況下におかれ、それゆえ、直系制の枠を守ることによって自らの兼業形態を主体的に選択しうるのである。そして、その直系家族周期段階に即応して、時には、農家経営内に嫡系成員の兼業に加えて傍系成員の農外就労や女子のそれを位置づけて、自らの生活の保障を図ろうとする。それは、「土地」をその「生活」の基底的存在と認識し、高度に機械化された稲作を前提として可能なのである。
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