本稿は、ルカーチの物象化論を、ジンメルとウェーバーの貨幣論からの系譜として見るところに、特徴がある。そして順次明らかになるのは、第一に、三者がともに「貨幣の支配」という事態を捉えていたこと、第二に、ルカーチの物象化論が、その「貨幣の支配」の克服にとり組んだジンメルとウェーバーの一つの理論的総括になっていること、そして第三に、こうしてその理論的総括となっているルカーチの「われわれ」の立場にもとづく物象化論が、実はルカーチの内部で、「われ」の立場にもとづく物象化論からの進展であったということ、しかもこの進展がヘーゲルとマルクスを媒介にすることによってはじめて可能であったということである。