社会学評論
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エスノメソドロジーの論理枠組と会話分析
山田 富秋
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1981 年 32 巻 1 号 p. 64-79

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抄録
エスノメソドロジーは相互行為場面での秩序形成のメカニズムを解明しようとする。ガーフィンケルは行為や発話に必ず伴うインデックス性 (意味のコンテクスト規定性) に注目することによって、規範的状況 (コンテクスト) が行為を秩序に合致させるわけではなく、コンテクストも行為も相互規定的な過程を通して「規範的社会構造」を形成すると捉える。
コンテクストを指示 (index) する活動がこの過程の内容であるから、メンバーのコンテクストを適切に指示する能力 (コンピタンス) 自体が問題となる。コンピタンスとは言語カテゴリーの使用能力である。すると秩序形成は、ある言語コミュニティのメンバーが当の言語カテゴリーを使用して、社会的現実を構成していく活動としてとらえられる。会話分析はこのような自然言語のメカニズムを研究主題とする。
こうして言語使用をある言語コミュニティに立脚した規範定立的な行為としてとらえるところに新たな視点が生まれる。それは日常生活における発話行為が「規範的社会構造」を、観察可能で報告可能なものにしていく説明活動 (accounting practices) であるとする視点である。しかもこの説明活動は細部にわたるまで、暗黙裡に、社会的メカニズムに従っている。自然言語のメカニズムは外的客観的な社会的現実を構成しているのである。
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