抄録
環境資源問題が深刻化する中で、経済学の領域からは、広義の経済学や地域主義という形で、この問題への根源的な対応が試みられている。しかし社会学の領域では、これまでのところこの種の問題への取り組みは、あまり積極的な展開を見ていない。
本稿では、広義の経済学や地域主義の問題提起を (1) 社会科学の視座転換に関わる課題、 (2) 実践的な社会の組織化に関わる課題、の二点に整理し、主として前者の課題を都市社会学的系譜のコミュニティ論の領域で受けとめ、発展させるために、生態社会学的視座を構築することを試みる。この生態社会学的視座とは人間の諸行為とそれをとりまく自然・生態系とのかかわりに、社会学的現象を分析する視座を据えることを意味する。この視座に立つことによって、共同生活と生活資源という条件のもとで、コミュニティの理論構成を行う視野が開け、従来の都市社会学的文脈で理解されるコミュニティ論とは異なる生態社会学的コミュニティが提示される。そのコミュニティの基本的な要件は、 (1) 生活資源の共同的統制、 (2) 自己完結的社会関係、 (3) 適正技術の定着、 (4) 構成主体の包括性、の四点である。