社会学評論
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兼業化の進展と農民層の生産・労働-生活過程の変容
新潟県西蒲原郡巻町S部落を対象とした事例研究
西尾 純子
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1985 年 35 巻 4 号 p. 420-438

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抄録

一九五〇年代半ばに始まる「高度経済成長」の過程を通じ、農村地域の隅々にまで「資本-賃労働関係」が浸透し、その過程を通じ、農民層の賃労働者化が進展した。それは、若年層にとどまらず、世帯主や妻をも巻き込み、まさに、「総兼業化」という事態の進展であった。そして、こうした事態の進展は、当然にも、従来の農村の「家族生活」「村落生活」に大きな変化をもたらしてきている。
ところで、以上のような状況が進行するなかで、農村社会の現実の変動の諸相を明らかにする試みがなされてきている。しかし、それらの多くは、「家族生活」「村落生活」の変容の側面を個別的に取扱うにとどまっていた。もとより、こうした変容は、地域の労働市場の展開、農業生産力の高まり、そして、「職場生活」のあり方との有機的・構造的関連のなかで変容しているものである。
それゆえ、本稿は、こうした視点にたち、兼業化の深化に伴う「いえ」「むら」の変容が如何なる論理の下で展開しているのか、そして、そうした「いえ」「むら」のあり方が彼らの現実の生産・労働-生活過程を如何に性格づけているのかという点に言及するものである。
本稿の対象は、新潟県西蒲原郡巻町S部落である。兼業農民層の生産・労働-生活過程を分析の基軸とするが、その際、これまで「農村社会学」では十全に把握されてこなかった、「地域労働市場」の展開や「職場生活」の現状も分析の射程にいれる。

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