社会学評論
Online ISSN : 1884-2755
Print ISSN : 0021-5414
ISSN-L : 0021-5414
社会調査と村落社会構造
北原 淳
著者情報
ジャーナル フリー

1985 年 36 巻 1 号 p. 24-34,144

詳細
抄録
特定の村落社会の構造的特徴をあきらかにすることを目的とした、事例研究的観察法調査においては、参与による直接観察よりはむしろ圧倒的に非指示的な面接質問によってデータをうることが多い。この方法は対象から一定の統計的手法によってモデルを導き出す方法とちがって、特定インフォーマントと社会関係を結ぶ中でデータをえなければならない。そのため、その社会関係のレベルに応じて情報のレベルもちがってくることが予想される。しかし調査者の対象社会への参与の度合を強め、インフォーマントとの親交を結べばそれだけ情報の精度が高まるという一般法則がなりたつ保証はない。調査者はインフォーマントとの二者関係のレベルだけではなく、その二者関係をとりまく社会的拘束要因を判断し、情報のレベルを判定する能力が要請される。村落社会の経験的実在からつくり出した概念やモデルが抽象的になりすぎず、中範囲的性格をもつためには、正確なフォーク・コンセプトの理解が必要である。この点で調査者は現地において、有能なアシスタント、インフォーマント、さらに共同相手としての研究者に依存する所が大きい。しかしフォーク・コンセプトに由来する理論モデルの理念型的限界にも留意すべきである。
著者関連情報
© 日本社会学会
前の記事 次の記事
feedback
Top