社会学評論
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日常経験と相互作用論
-ゴッフマンのドラマツルギーをめぐって-
丸木 恵祐
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1986 年 37 巻 1 号 p. 24-44,129

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抄録

人間の日常経験の形態とその意味を社会的状況との関連で考察する人びとにとって、E・ゴッフマンのドラマツルギーは、きわめて刺激的である。ドラマツルギーは演劇の比喩を用いて、社会的相互作用の主観的事実と客観的事実を同時に記述するアプローチである。それは、舞台上の「人物」が劇場外の広い世界と何のかかわりもなく既成の台本の産物と見なされるように、「自己」を劇場、つまり社会的状況という閉鎖的体系の中に呈示された人工物と見なす。本稿では、行為者が状況適合性のルールにふさわしく自己を呈示し、自己の行為を他者に有意味なものにするために利用する「形態」に注目する。そのことによって、ゴッフマンが行為者の創造的主観性を強調するシンボリック相互作用論の流れをくみながら、なぜ禁域とされてきた状況の客観的側面にふみこみ、社会的事実の拘束性を説くデュルケムの偏見に染まって行ったのかが明らかにされる。その際、外見上の個々の経験の背後に潜み「形態」に意味を付与する「構造」が確認できよう。

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