抄録
ことばの疎外は意味の喪失を意味し、ことばの形式化、機能化、神話化といった契機によると考えられるが、現代ことに比重を増しているのは機能化である。だがそれがことばの構造内でどう生じるのか、必ずしも明らかではなかったと思われる。
そこで本稿ではJ・ハーバーマースの理論を基礎にコミュニケーション行為の理論を構想し、この問題を考える。具体的には発話行為論とその展開の中でことばの意味、慣習、機能を捉え、特にことばの機能の中に効力と効果を分ける。その一方で精神分析論よりことばの疎外の心的メカニズムを取り出す。
そしてこうして得られた枠組によって、最後に、ことばの疎外を再考し、現代人の意識・行動のもつ諸問題に言及する。