社会学評論
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現代日本の政治過程
古賀 倫嗣
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1988 年 38 巻 4 号 p. 421-430,493

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抄録

わが国の政治過程を考察するさいもっとも重要なのは、一九五五年社会党統一と保守合同により成立した保守-革新の政治枠組をもつ「五五年体制」の検討である。国民経済レベルでの高度成長とパラレルに、政治レベルでの自民党長期政権が続き、「経済大国日本」を実現させた。ところが、六〇年代後半、高度成長路線は大都市における過密と公害、生活問題を引き起こす。こうした都市問題に対しては、中央より地方での反応が鋭く、七三年には東海道メガロポリスに沿った主要都市に「革新」自治体が誕生した。「地方革新」が「中央保守」を包囲するという政治戦略とともに、対話による行政、市民参加といったその政治手法は選挙以外に政治参加の手段が存在することを現実に示した。
ところで、「革新」自治体の後退は七〇年代末期には始まり、横浜・沖縄・東京・京都・大阪と相次いでその拠点を失った。だが、地方「革新」の崩壊は「保守」の復権ではなかった。今や政治枠組としての有効性を失った保守-革新の図式にかわって「保革相乗り」で登場したのは、「脱イデオロギー」を標榜する自治省 (旧内務省) 出身の行政テクノクラートであった。こうしたタイプの首長を選択した住民の側にも「生活保守主義」という新しい動きがみられたのも、この時期からである、この層は、一般には浮動票層、支持政党なし層と呼ばれるが、彼らは政治的行為の有効性についてきわめて敏感で、どのチャンネルを使えば自己の利益がうまく実現できるかを常に考えるタイプの市民層といってよい。八七年四月、統一地方選挙のさいの「売上税反乱」はそうした一例にすぎない。
戦後長期にわたって政治の基礎的な枠組であった保守-革新の図式は、こんにち中央-地方の図式に編成替えされ、さらに四全総にみられるように、東京-非東京との対立、「地方」内部の矛盾がいっそう深化している。そういう意味で、現代は「巨大な過渡期」なのである。

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