社会学評論
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親子同居の家族発達論的考察
加藤 喜久子
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1988 年 39 巻 3 号 p. 284-298,369

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抄録
この論文での主要な関心は、「家」原理に代わる親子同居の新しい説明原理にある。ここでは、二世代夫婦同居家族の存在条件に関する理論的枠組とデータを提示したいと思う。
親世代と子世代を独立の単位とみて家族発達アプローチに基づき世代間関係を考察した結果、次の点が明らかになった。
二世代夫婦同居家族の形成は、親世代、子世代それぞれの家族発達において生じる危機的局面をスムーズにのりきるための有効な方策としての意義をもつ。とくにそのメリットは、家族周期段階の初期と晩期に大きい。形成にあたっては、 (1) 人的物的資源をもたないため発達課題の達成や段階移行に困難がある状況、 (2) これを援助できる人的物的資源の所有、 (3) 生活構造調節の柔軟性、 (4) 同居を肯定する家族観と親子の情緒的絆の四つが条件となる。このことは、もし積極的メリットがみいだされないとき、同居家族は解体することを意味する。ここでは、 (1) 課題達成や段階移行の危機的局面の克服、 (2) 援助力の低下、 (3) 生活構造調整の困難、 (4) 親子の対立の四つが分解条件となる。家族が一つのシステムとして機能するためには、経済やサービス面における顕在的メリットと情緒的安定という潜在的メリットを確保する生活共同の態勢と、共同生活により発生しやすくなる世代間葛藤の回避策がなければならない。とくに子世代の家族周期での早期の同居開始と息子との同居に対応する葛藤回避策としては、生活分離が重要である。
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