社会学評論
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精神障害と社会的態度仮説の実証的研究
--アルコール症の場合--
清水 新二
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1989 年 40 巻 1 号 p. 31-45,114

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抄録

精神障害者に対する人々の態度を規定する要因には、大別して二つの要因があげられる。第一のカテゴリーは、当人の行動障害の程度や精神病院への入院の有無等、本人の疾病行動にも関わる要因であり、第二のカテゴリーは態度表明する側に関するものである。臨床や援助活動の現場への社会学的フィードバックを強く意識する本稿では、アルコール症の場合をとりあげつつ、第二のカテゴリーとして、アルコール症に関する人々の知識、アルコール症者との接触経験、実際に認知しているアルコール症者との間柄をとりあげた。そして知識仮説、接触仮説、間柄仮説の三つが作業仮説として定立され、それぞれについて調査データにもとづく検討が加えられた。他方人々の態度にも仮定上の態度と実際上の態度の二つのレベルが指摘でき、本稿でもこの二つのレベルを区別した上で、上述の作業仮説の検証を試みた。
その結果、一般論的な態度では知識仮説と間柄仮説に支持的傾向を示すデータが得られたものの、接触仮説は棄却された。実際上の態度でも間柄仮説に支持的データが得られたが、知識仮説では正確な知識の保有が確実に受容的態度を導くとはいい難く、他方で拒絶的態度を増加させさえするという、部分的棄却と部分的反証の傾向を示した。
最後に、知識の正確さやごく親しい間柄が逆に拒絶的態度をもたらすことについて考察が加えられ、また精神障害者に対して人々の示す態度の複雑さについても整理がなされた。

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