社会学評論
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学歴と社会経済的地位の達成
日米英国際比較研究
石田 浩
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1989 年 40 巻 3 号 p. 252-266

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抄録

産業主義のテーゼは産業社会における社会経済的資源の配分過程が同質化することと、業績主義的原理の重要性が産業化の進行とともに進展することを予想した。本研究のテーマはこの産業主義のテーゼを念頭に置き、学歴と社会経済的地位達成過程に関する日米英国際比較研究を行うことにある。学歴取得過程に関してみると、生得的要因は現代日本、アメリカ、イギリス社会において依然として根強い影響力をもっていることが指摘された。コーホート分析では、生得的要因の高卒、Oレベル学歴へ与える影響力は産業主義のテーゼが予期したように減少傾向にあるが、高等教育機関レベルの教育機会は逆に閉鎖性が増大する傾向にあることが判明した。
社会経済的地位達成過程に目を移すと、コーホート分析による趨勢は、産業主義のテーゼの予期するように学歴 (業績主義的原理) が出身背景 (属性主義的原理) に比べて相対的重要性を増大する傾向が日米英三国に読み取れる。しかし、社会経済的資源の配分過程が日米英三国において同質的であるという仮説は分析結果から支持されたとは言い難い。社会経済的地位達成過程における学歴の出身背景に対する優位性は、アメリカにおいて最も顕著に見られ、日本はイギリスよりも学歴の相対的重要性は低い。さらに学歴の社会経済的効用にも日米英三国の間にかなりの違いが見られる。これらの結果によれば、産業社会における社会経済的地位の配分過程は、各国独自の教育制度と労働市場の構造に大きく影響されており、必ずしも同質的なパターンを生み出すとは限らないことが推察される。

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