社会学評論
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行為論への一視角
解釈的パラダイム (ゴッフマン・エスノメソドロジー) の可能性をめぐって
坂本 佳鶴恵
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1989 年 40 巻 3 号 p. 267-280

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抄録

構造機能主義に代表される従来の理論は、その社会決定論的な人間観が批判されてきた。これに対して、社会に対する個人の主体性を取りこんだ理論として、個人の意味解釈能力に着目した解釈的パラダイムが注目を集めたが、主体性を理論化するという課題設定自体に問題があるために、社会非決定論としては明確な理論を提示できていない。しかし、主体性問題とは別に、規範と行為のより現実的な記述にとっては勿論、規範の変更や変動を検討するうえで、行為が規範に一義的に決定されない側面、行為が規範の存在に影響を及ぼす側面を理論化することが不可欠である。従来の行為論は、規範と行為とを直結させていたが、そこには、状況における規範の使用 (状況定義) という媒介項が看過されている。解釈的パラダイムの記述にみられる行為の状況定義機能に着目することによつて、我々は、状況における規範の使用を左右し、普遍的な規範の共有を確認する相互作用のモデル化に踏み出すことになる。後者の問題には、反省作用の機能の仕方や状況的な相互作用における集団の現れ方など、不均質な社会を前提とした相互作用分析が必要となろう。

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