抄録
本稿は、『資本論』商品論における貨幣生成論の解釈である。まず「『経済学批判要綱』への序説」でマルクスが主張した方法を確定し、そこから『資本論』の商品論を読み解く。明らかになるのは、商品論の各部分が個体-類体、現実-意識の二つの軸でとらえられるパラダイムのなかに整理されるということである。そこから貨幣生成論を解釈する視座が生まれる。その視座から、価値形態論と交換過程論に別れて論じられている彼の貨幣生成論を統一的に再考する。それによって、彼の、労働生産物から商品、商品から貨幣への論理を導く。そして最終的に、彼の貨幣生成の論理に内在する前提と特徴を明らかにし、「貨幣とは商品である」という命題の証明が成功しているか否かを結論する。