社会学評論
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後期資本主義社会における新中間階級
概念と構成比増加のモデル
丹辺 宣彦
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1990 年 41 巻 2 号 p. 160-173

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抄録
成熟した後期の資本主義社会においては、ほぼ例外なく新中間階級 (階層) と呼ばれている社会層の規模の拡大がみられ、この層の特性を解明することは、立場の違いを問わず社会理論にとって大きな問題となってきた。マルクス主義の階級論はこの問題に関してはこれまでのところ記述的な説明以上のものを提示することができず、二階級モデルに依拠しようとする伝統的傾向ともあいまって、産業社会論の側からも厳しい批判を受けている。そこで、本稿ではマルクス主義の理論に内在しつつ、まず近年の新中間階級論を批判的に吟味しながら、この階級の経済的規定を概念的に把握する。そのためには、直接的な生産関係のみからする階級基準でなく、流通の規定をいったん媒介した上で生産関係に準拠した階級基準を特定するという方法-このことは価値論を用いることを意味しているが-をとる必要がある。このような作業を経た上で、成熟した資本主義社会において新中間階級がその規模を拡張した根拠と条件を示すモデルを提示し、さらにこの階級の存在と資本主義社会の再生産の論理との関係を検討して今後の分析につなげることとしたい。
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