抄録
従来の組織論の多くは、組織形態を技術的機能の観点からとらえてきた。このことはクローズド・システム論の場合でも、またオープン・システム論の場合でも同様である。それに対して、社会学的新制度派組織論は、組織は社会に広く浸透している意識を反映して組織形態を構成すると論じる。この見解に基づいた組織フィールド内における制度的同型化の現象はさまざまな種類のフィールドで観察することができる。しかし、新制度派組織論は従来の組織論と全く関係なく生じてきたのではない。制度的環境への注目はセルズニックの影響を受けている。ただし、文化的影響力がどのように作用すると考えるかという点で、両理論は異なっている。この相違は両理論が依拠している社会学一般理論、つまり知識社会学と機能理論とが、それぞれ社会的現実をどうとらえているかの相違に由来する。新制度派組織論は制度化された組緯形態がどのように伝播ないしは再生産されるかという議論に今まで集中してきた。そこから制度化された組織形態の発生あるいは消滅過程にまで視野を広げることが課題となる。そこで、学習過程を環境に適応するための行為過程としてとらえるマーチの組織学習論に接合して展開していく可能性を示唆する