社会学評論
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行為・時間・自己
G・H・ミードの「リフレクション」への「行為の観点」からの再接近 (1)
徳川 直人
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1993 年 44 巻 1 号 p. 16-29

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抄録
本稿では、従来より着目されてきたミードの自我論と、最近になって注目を集めつつある彼の時間論とが、内容的に接続される。そのことによって、対象世界の構成やその意味をともすれば「意識に委託」してしまうミード解釈の難点を克服するための、言わば足掛かりが得られると考えられるからである。ミードのいわゆる「行為の観点」は本来、意味や理性といった問題を自我論や意識論の枠内にとどめないための観点であり、主体と対象、個体と環境といった二項対立図式ないし「自然を二分する考え方」を克服しようとする思索の方法であった。本論ではまずミードのこの基礎視角を整理し、その観点から述べられた時間論を提示する。そうして、行為の観点からする時間次元の構成というこの論点をふまえれば、彼の「リフレクティブな自我」論や相互作用論も今までとは別様の解釈が可能である点を指摘し、新たな課題を引き出そうとつとめる。この作業を通じ、主体主義的な観念論から自由であったとは言え、人々の内省や討議による意味や目的の理性的創造の問題が、目的論的歴史観や社会進化論に対峙する視点の構築の問題として、ミードの中心的な課題関心であった点も、あらためて強調される。
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