社会学評論
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エスニック・メディアの歴史的変容
国民国家とマイノリティの二〇世紀
町村 敬志
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1994 年 44 巻 4 号 p. 416-429

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抄録

エスニック・メディアとは、人間の空間的移動によって産み出された人種民族的マイノリティが自前の言葉を求めて作り出すメディアである。二〇世紀における国民国家の形成と国際的人口移動は、世界各地でマイノリティ・グループを作り出し、そこに多様なエスニック・メディアが生まれた。本稿は、「移民メディア」、「マイノリティ・メディア」、そして「越境者メディア」という三つのタイプを設定し、それに焦点を絞ることによって、アメリカ合衆国におけるエスニック・メディアの歴史的変容過程を分析した。
アメリカ社会の多様性が増大するにつれ、メインストリーム文化への同化を前提とした移民メディアから、多元的社会における集団の自立性獲得をめざすマイノリティ・メディアへと、エスニック・メディアの基本的性格は大きく変化してきた。しかし近年、越境体験が日常化するにつれ、ホスト社会からも出身社会からも距離をおく越境者のためのメディアが登場してきた。その結果、エスニック・メディアは、その社会的機能や文化的インパクトという点で、大きく多様化しつつある。

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