社会学評論
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市民権とメキシコ系移民-アメリカ合衆国の事例から-
江成 幸
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1994 年 45 巻 1 号 p. 61-76

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抄録

欧米諸国では近年, 市民権の一要素である社会的諸権利が外国籍の移民に拡大されている。本稿はアメリカ合衆国への最大の移民集団であるメキシコ系移民を取り上げ, 国籍を問わず社会的諸権利が拡大されてきた成果を明らかにするとともに, 今なおメキシコ系移民の権利享受を阻害している社会的要因を分析する。メキシコ系移民が社会福祉を利用すると, 低所得者層としてのスティグマを伴ってしまう。しかもメキシコ系移民はエスニック・マイノリティであり, 国境管理によって排除的な扱いを受けているため, 権利保障が十分とはいえない。T.H.マーシャルの市民権と社会階級をめぐる議論は, メキシコ系移民の事例にも有効である。移民をめぐる市民権は, 普遍的人権との連関や, 国家帰属から自由な社会運動の可能性など, 国民国家の枠組を越えた展望が求められている。

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