抄録
日本的な紛争処理手続きの分析に現在欠けているのは, 日本と西欧の手続きを社会関係のレベルで対等に比較しうる, 中立的な分析枠組である。本稿ではそのような枠組として, 決定手続きという角度から二対の座標軸を立て, その組み合わせで四つの類型 (〈当事者-S (sachlich) 秩序回復〉, 〈第三者-S秩序回復〉, 〈当事者-P (persönlich) 秩序回復〉, 〈第三者-P 秩序回復〉) を区別する。この分類で〈当事者-P 秩序回復〉型に位置付けられる日本的な紛争処理手続きの特性は, 〈第三者-S 秩序回復〉型である西欧的な紛争処理手続きとの対比においてモデル化される。また両者の相違の歴史的な発生については, 同じ〈当事者-S 秩序回復〉型からの二方向への転換として位置付けられる。
四つの類型は, この分野の主要な先行業績である川島武宜の法社会学的研究を踏まえ, またその限界を克服する形でたてられている。この類型を通して, 川島的な西欧準拠型の枠組が見失う局面と, とらえうる局面が, それぞれ明らかにされる。そして川島の的確にとらえていたものは, 日本社会における一見自律的にみえる紛争処理手続きが, 外部からの力を契機として存立している独特の構造であったことが明らかにされる。