社会学評論
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道徳共同体論による社会分析のあり方
土井 文博
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1994 年 45 巻 3 号 p. 316-331

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抄録

この論文の目的は, E. デュルケムが提唱した道徳共同体論を基として, 社会学が目指すべき実証的な社会分析のあり方を整理し提唱することにある。つまり, デュルケムが語る道徳的世界を日常生活レベルで具体的に描き出し, 人々の実際の社会生活の分析, そして改善に役立てられるような研究の方向を示すというものである。そこで, まずデュルケムの道徳共同体論について概観し, そのポイントや特徴を押さえる。次に, デュルケムの道徳共同体論を具体化するのに成功していると言われるゴフマンについて検討し, その功績や特徴を押さえる。その際にゴフマンの道徳共同体論の欠点もまた明らかにする。最後に, デュルケムの方法論が抱える課題を示した上で, 私自身のデュルケム解釈に基づいて, ゴフマンの対面的相互行為分析をデュルケムの方法論の中にうまく位置づける方法を提案する。
「社会を学問する」という場合, それは様々な方向で行われている。ある者は大規模なアンケート調査を行うことによって, ある者は純理論的な見地から, またある者は参与観察によって, という具合にその社会分析のあり方は実に多彩である。そうした多様な社会学の方法論の中で, 本稿では E デュルケムが提唱した道徳共同体論に注目して, 実証的な社会分析の一つの可能性を提示することにしたい。

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