社会学評論
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自律的公共性への構造転換に向けて
市民社会の基盤としてのメディア・ネットワーキングの可能性
干川 剛史
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1994 年 45 巻 3 号 p. 332-345

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抄録

今日のいわゆる情報化社会は, 情報環境が行動環境へと置き換わった社会である。こうした社会では, マス・メディアの構成する情報環境が人々の判断や行動に大きな影響を及ぼすことになる。そこで, 人々が自由な発言と議論を通じて情報環境を批判的に吟味し, それに基づいて意見や意思を形成する領域が不可欠になってくる。それが公共性である。
公共性とは, 発言し議論し合う市民の共同的意思に基づいて市民社会の基本的原理が現実の社会生活の中で実現されるために不可欠な近代社会の中枢的領域である。この公共性の成立と展開の過程を西欧に焦点をおいて歴史的に後づけ, 市民の公器から広告・広報媒体へのマス・メディアの変質と公共性の構造転換の関連を明らかにしたのが, J. ハーバーマスであった。
彼の『公共性の構造転換』において設定された問題は, 筆者なりに解釈すれば, 市民による国家・経済システムのコントロールを通じて社会を変えて行くために, いかに自律的な公共性の構築が可能となるのかということである。
こうした問題設定に基づいて, コンピューター・ネットワークを媒介にして展開される「新しい」社会運動をとりあげ, 今日の社会における自律的な公共性構築の可能性を情報社会論と社会運動論の観点から考察してみたい。

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