社会学評論
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歴史記述と弁証法
史的唯物論とポスト・マルクス主義とのあいだ
山田 信行
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1995 年 46 巻 2 号 p. 158-171

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抄録

本稿は, マルクス派の視点から歴史社会学の方法論を整備しようとする一つの試みである。本稿は三部から構成される。第一に, アメリカ合州国における歴史社会学の方法論論争を概観することによって, 求められている方法が演繹的な方法と「総体性」への志向であることを確認する。そのうえで, そのような要件をみたす方法が, 弁証法的なそれにほかならないことを提唱する。第二に, 史的唯物論の再構成の試みに見られる難点を確認したうえで, それを克服する試みとして, 多元的資本主義発展論としての弁証法的歴史社会学の構想を提示する。この際, 弁証法という論理が閉鎖的な「概念の自己展開」とは区別されるものであることが強調される。第三に, 弁証法的な論理の問題構制は「ポスト・マルクス主義」のそれと必ずしも抵触するものではなく, ギデンスも含めたポスト・マルクス主義的主張はかえって弁証法的方法の可能性を矮小化するものであることを指摘する。

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