1996 年 47 巻 3 号 p. 350-365
高齢者のサポート・ネットワークに関して, 女性は配偶者・子ども・その他の親族・友人など広く多様なサポート・ネットワークを持つのに対して, 男性は配偶者のみに頼る傾向があることが, 従来から指摘されてきた。本稿の目的は, このようなサポート・ネットワークの広がりの差を規定する要因を明らかにすることである。まずはじめに, サポート・ネットワークのジェンダー差を生む要因についての諸説を検討し, その結果として, 人と人との結びつきの形成自体に価値をおく「結びつき志向」の役割を遂行しているかどうかが重要な要因として考えられるという仮説を示す。次に, 中高年男性に関するデータを分析し, その結果, 仮説どおり, 男性においても「結びつき志向」の役割を遂行していることにより, サポート・ネットワークが配偶者以外に広がる可能性が高まることを明らかにする。最後に, サポート・ネットワークの考察のためには, ライフ・ステージを通じた分析が必要であること, 行動次元の視点を導入する必要があること, および, 「サポートを受ける」という行為を, 「無力な」行為ではなく, 他者との結びつきをつくるという「能力や熟練が必要な」行為としてとらえる必要があること, の3点について議論を行う。