社会学評論
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観光社会学の現状と課題
安村 克己
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1996 年 47 巻 3 号 p. 366-377

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抄録

本稿の目的は, 観光の社会学関連文献をレヴューしながら観光社会学の対象領域を俯瞰し, 観光社会学の学問的意義を再考することにある。
現代観光の影響は, 個人の行為レベルから世界システムのレベルに至るまで広範囲に及び, 多様かつ多大である。したがって, 観光はいまや社会学者にとって看過できない社会現象であるが, それに対する社会学の取組みはほとんどなされていない。とりわけ日本の社会学者は, 観光研究に無関心であるようだ。こうした観光社会学の現状を勘案し, 本稿は, 観光社会学の現代的意義を検討していく。
観光社会学の成果にはすでに注目すべき業績も見られるが, それらの成果を体系的に整理する作業は, いまだなされていない。本稿では, 観光社会学の対象領域を明確にするために, 社会学的空間レベルの4つの区分- (1) 行為者, (2) 社会的相互作用, (3) 社会システム, (4) 世界システム-に対応させて, 観光社会学関連の既存の経験的研究結果を4つの対象領域タイプ- (1) 観光者類型, (2) 観光のホスト-ゲスト関係, (3) 社会的・文化的インパクト, (4) 国際観光とマスツーリズムに分類する。この準拠枠に従って, 観光社会学の射程となる対象領域を概観し, その学問的意義を吟味していきたい。

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