社会学評論
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ロック音楽文化の構造分析
ブルデュー〈場〉の理論の応用展開
南田 勝也
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1998 年 49 巻 4 号 p. 568-583

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抄録

本稿は, 20世紀後半を代表する音楽文化, 若者文化であるロック (Rock) を, 諸個人の信念体系や社会構造との関係性の分析を中心に, 社会科学の対象として論述するものである。
ロックはその創生以来, 単なる音楽の一様式であることを越え, ある種のライフ・スタイルや精神的態度を表すものとして支持されてきた。それと共に, 「ロックは反逆の音楽である」「破壊的芸術である」「商業娯楽音楽である」といったように, さまざまにその “本質” が定義されてきた。ここではそれらの本質観そのものを分析の対象とし, 諸立場が混合しながらロック作品を生産していく過程について考察する。
そのような視点を用いた論理展開をよりスムーズに行うために, ピエール・ブルデューの〈場〉の理論を (独自の解釈を施したうえで) 本論考に援用する。「ロック」という名称を共通の関心とする人々によって構成され, [ロックである/ロックでない] という弁別作業が不断に行われ, ロック作品がその都度生産されていく (理念的に想定した) 空間を「ロック〈場〉」と呼び, 〈場〉の参与者の社会的な配置構造とそこに生じるダイナミズムを論述することを主たる説明の方法とする。これらの考察を基にして, 最終的に汎用度の高いモデル図を作成し, 社会と音楽の関係性を総合的かつ多角的に把握するための一つの視座を提出する。

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