社会学評論
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「中」意識の静かな変容
階層評価基準の時点間比較分析
吉川 徹
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1999 年 50 巻 2 号 p. 216-230

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抄録

1970年代までの日本人の「中」意識増大の趨勢は, 高度経済成長の終焉と期を一にするかのように, おおよそ75%の「中」回答の持続状態へと変わった。本稿では, 多くの論客がこれまで追い求めてきた「中」意識について, 分析視座の転換を図る。すなわち, 表面上はほとんど変化のみられないこの20年間について, 従来のように「中」回答者だけに拘泥することなく, 分布全体の傾向を扱う回帰分析を行なって, 潜在的な因果構造を明らかにするのである。この分析の結果, 日本人の階層評価基準は, 男女ともに, 1970年代の浮遊する階層帰属意識の時代から, 1980年代の経済階層と主観的階層評価による階層帰属意識の時期を経て, 1990年代の多元的階層評価基準による階層帰属の時代へ……と静かな変容を遂げていたことが明らかになる。そしてここからは, 現代日本社会を生きる人々が主観的評価, 経済階層, 職業階層, 学歴階層などの複数の基準をもって, 多元的に自らの帰属階層を判断する状況に至ったことが示唆される。

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