2018 年 60 巻 5 号 p. 1089-1094
症例は76歳の女性.発熱と心窩部痛を主訴に受診し,高度の炎症反応を認めた.造影CT,MRI,EUSで膵尾部に70mm大の被膜を有する多房性嚢胞がみられた.病変はcyst-in-cystの形態を呈しており,嚢胞内に造影効果のある10mm大の壁在結節を認めた.ERPで膵管との交通を認め,嚢胞液では好中球が増加し,細菌培養で大腸菌(Escherichia coli)が検出された.以上から,細菌感染を伴った膵粘液性嚢胞腺癌と診断し,外科的切除術を施行した.病理学的に,嚢胞壁内に卵巣様間質を認め,壁在結節部は腺癌であった.
感染性膵嚢胞をみた場合には,腫瘍性嚢胞の可能性も念頭におき,治療法を検討する必要がある.