社会学評論
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地域住民組織における共同性と公共性
町内会を中心として
吉原 直樹
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キーワード: 町内会, 共同性, 公共性
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2000 年 50 巻 4 号 p. 572-585

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抄録
グローバルとローカルとのパラドクスが取りざたされるなかで, 新しい公共性形成のありようが種々論議されている.特に近年, リベラリズムとコミュニタリアニズムとの間の論議が深まるとともに, 集団的な自己統治の復活といったことが争点化しつつある.本稿は, こうした現実の動きを見据えながら, 日本社会の基層に根を張ってきた地域住民組織, とりわけ町内会に焦点を絞って, そこでの共同性, 公共性の内実を明らかにする.そしてそうしたものが, 集団的な自己統治の復活という文脈で浮かび上がる「共」の領域にどのように通底しているかを示す.
本稿での歴史分析, そして若干の比較社会分析を通して明らかになったことは, 町内会における〈共同性〉が「住まうこと」に根ざして, 共同生活にあらわれる共通の課題を地位とか身分に関係なく共同で処理するところから派生したものであり, そうした〈共同性〉が普遍化して生じた「共的な自治」 (=ガヴァナンス) =「公的」業務の枠組が, いわば〈公共性〉として表出しているということである.本稿では, こうした〈共同性〉〈公共性〉の基底にひそむ, 「伸縮自在な縁」としての地縁の論理が, 実は上述した「共」領域に通脈することを指摘した.
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