社会学評論
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ディスアビリティの政治学
障害者運動から障害学へ
石川 准
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2000 年 50 巻 4 号 p. 586-602

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抄録
日本の障害学 (ディスアビリティ・スタデイーズ) は近年ようやく立ち上がりの機運を示している.だが, それがどのような方法論を選択し, どのような主題に向き合おうとしているのかはまだはっきりと示しえていない. 考えられる一つの選択は, ポスト福祉論的な批判を徹底させ, ディスエイブリズムの脱構築をめざすという道であろうが, それにしてもそのための理論的基盤はまだ脆弱だといわざるをえない.本稿は, 障害学の今後の展開のための準備ノートとでもいうべきものである.最初に, 労働ベースの財と意思決定と存在価値の分配システムから排除される障害者が, この分配システムの相対化をめざさざるをえないことを確認したうえで, 障害者運動および障害学に理論的視座の重層性を提供するものとして, 英国のデイスアビリテイ・スタデイーズが打ち出した「社会モデル」と, ろう文化運動とデフ・スタディーズの理論的成果である「文化モデル」を示したうえで, 運動や理論の周辺に流布している平等か差異かといったような二者択一を迫る言説の暴力性を批判する.
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