社会学評論
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公私の分離は必要か?
フェミニズムと公共性
永田 えり子
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2000 年 50 巻 4 号 p. 603-616

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抄録
本稿はフェミニズムをはじめさまざまな角度から, 「公か私か」という言説がいまや無意味であることを見る.第1に, 公私は分離できない.何が私財で何が公共財であるかは, 実際には区別できない.「性の非公然性原則」は性の公共化を押しとどめる能力をもたず, したがって公私の境界維持機能を持たない.第2に, 公私の分離は不公正である.フェミニズムによれば, 公私の分離は女性, 性と生殖, 家庭を私的領域として分離することによって性差別を温存する.ならば今後問われるべきことは, 何が公で何が私か, という問題ではない.どのような正当性のもとで, 誰のどのような自由が認められるべきか, ということである.現在, 新たな共同性を築く鍵はこの点に存する.
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© 日本社会学会
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